ツールの前に、公式レールの棚卸しを
生成AI時代の可視性データには、性質の違う四つの面があります。利用者が実際に見る消費者UI、 開発者が統制された入力で呼ぶAPI、サイト所有者だけが読めるパブリッシャー向け集計、そして事業者が 管理するオーナープロフィール。この四つは互いの代替になりません。APIの回答は消費者画面の 再現ではなく、パブリッシャー向け集計は個々の回答の原文でもないからです。だから最初の問いは 「どのツールを買うか」ではなく、「プラットフォーム自身が公式に何を出しているか」です。 この地図を持っていれば、ツールや代理店の説明がどのレールの話をしているのかを、正確に 評価できるようになります。
Google — Search Consoleの生成AIレポートは実在します
Googleの公式ヘルプは、Search Consoleの生成AIパフォーマンスレポートを文書化しています。 対象はAI OverviewsとAIモードでの自社サイトの表示で、Search Labsの実験サーフェスは含まれません。 ページ・国・日付・デバイスの切り口で確認でき、画面からのエクスポートにも対応します。 自社プロパティがAIサーフェスにどれだけ載ったかを、所有者データとして読める公式レールです。 公式一次 support.google.com
一方、このレポート専用のAPIエンドポイントやフィルタは、公式ドメインに限定した検索 (2026年7月15日実施)では見つかりませんでした。従来のSearch Analytics APIが生成AIレポート 専用のAPIというわけでもありません。現時点の運用設計として正確なのは、「UIエクスポートを 前提に収集フローを組む」です。
Bing — 日本で特に重みを持つレール
まず前提の数字です。2026年6月StatCounterの日本シェアはGoogle 59.04%、Bing 33.10%、 Yahoo 6.23%。米国市場と違い、日本ではBing系のサーフェスが検索のおよそ三分の一に届きます。 Bingのパブリッシャー向けデータは、日本では脇役ではありません。 参考データ gs.statcounter.com
そのBingは、パブリッシャー向けの引用データでいちばん進んでいます。Bing Webmaster Toolsの AI Performanceは2026年2月10日の公式発表でプレビュー公開され、自社サイトへの引用(citation)、 引用されたページ、標本化されたグラウンディングクエリ(根拠取得クエリ)、そしてページとクエリの対応を示します。 公式一次 blogs.bing.com
さらに2026年6月16日の公式発表で、Intents・Topics・Citation Share・Compareの各ビューが 加わり、公式ヘルプの範囲ではCSV・Excelでのエクスポートとフィルタの反映も確認できます。 読み方の注意はひとつ — Citation Shareは標本化された観測にもとづく比率で、権威性や トラフィック、順位そのものを示す指標ではありません。それでも「どのページが、どんな クエリ群で、どれだけ引用されたか」を所有者データとして時系列で持てるのは大きな価値です。 私たちが確認した公式レールの中では、現時点でこの価値を公式に文書化しているのは このレールだけです。 公式一次 blogs.bing.com
専用の公開APIは、公式ドメイン限定の検索では見つかりませんでした。従来のBing Webmaster APIはAI Performanceの代わりにはなりません。ここもGoogleと同じく、エクスポート前提の 収集設計が現在の正解です。 公式一次 learn.microsoft.com
ChatGPT — 読めるのはクローラーの役割とリファラルまで
OpenAIの公式FAQは、検索用のOAI-SearchBotと学習用のGPTBotを役割の異なるクローラーとして
説明し、ChatGPT経由の流入にutm_source=chatgpt.comが付くことを示しています。
つまり「引用されて、クリックされた」流入は、自社のアクセス解析で今日から分離できます。
これは実務ですぐ効く公式シグナルです。
公式一次
help.openai.com
ただし、パブリッシャー向けにChatGPT全体での自社ドメインの表示・引用を集計して見せる ダッシュボードやAPIは、公式ドメイン限定の検索では見つかりませんでした(2026年7月15日 時点)。リファラルは「クリックまで進んだ引用」の影であって、回答内での言及や引用の 全体像ではありません。
Perplexity・Gemini・Agent i — パブリッシャー向け引用レールは未発見
Perplexityにも、GoogleのGeminiアプリにも、自社ドメインの表示・引用を横断的に見せる パブリッシャー向けダッシュボード/APIは、公式ドメイン限定の検索では見つかりませんでした。 日本固有のサーフェスであるYahoo! JAPANのAgent i — 2026年4月20日に発表された、Yahoo! AI AssistantとLINE AIを統合する対話型エージェント — についても、回答を取得する公開APIは 未発見です。 公式一次 lycorp.co.jp
なお、Yahoo! JAPANのウェブ検索APIは2013年に提供終了が公式に告知されています。過去のAPIの 記憶で現在の可用性を語らないことも、この地図の一部です。 公式一次 developer.yahoo.co.jp
「見つからない」と「存在しない」の区別
この記事の「未発見」はすべて、2026年7月15日に公式ドメインへ限定した三つの検索系統で 確認し、日付つきで記録した結果です。これは「その機能が存在しない」ことの証明では ありません。非公開のパートナーAPI、アカウント限定の機能、今後の提供は、この判定の 範囲外に残ります。逆に言えば、「どのAIでも引用を全部計測できます」という包括的な宣伝文句に 出会ったら、この地図と突き合わせる価値があります — その計測がどの公式レールに 立っているのか、それとも独自観測なのかで、数字の意味がまったく変わるからです。
公式レールの先にあるもの
公式レールが映すのは「自社ドメインの集計」まで
Search Consoleも、Bing AI Performanceも、見せてくれるのは自社が所有するプロパティの
集計です。日本語の実際の質問で、どのブランドが名指しされ、どのURLが根拠として引用され、
比較の候補にどう並んだのか — 競合を含むその地図は、公式レポートの設計範囲の外にあります。
CiteAngleはそこを実際の観測で埋めます。日本語の質問群でAI回答を反復観測し、ブランドの 不在・言及・引用・役割を原回答の証拠つきで分解し、この記事の公式レールのデータと 突き合わせて、次に直す一手まで接続します。公式データを読める会社は多くありません。 公式データの「先」を測れる会社は、さらに少ないのが現状です。